雨の日に保護された親子
実は、店長稲垣の飼い猫の話です。
2年前の秋、寂しがっている先住猫のために、もう1匹猫を飼おうと里親に出ている仔を探していた時でした。友人が、大雨の日に親子3匹で迷い込んできた猫を保護しました。
友人の家では多頭飼いをしており、それぞれに病気を持つ猫もいましたので、
体力の無い仔猫を育てることは危険でした。
ちょうど、仔猫を探していた折だったので、渡りに船と我が家で引き取ることになりました。
兄弟を引き離すのは可愛そうだという子どもらの声に押されて、2匹一緒に家族に迎えることになりました。
しかし、暫くしてまた連絡があり、「母猫が白血病キャリヤである」と診断が下ったとのこと。
母猫がキャリヤである場合、ほぼ100%の確率で子どもに感染しているといわれています。
私が引き取る2匹のオス猫たちも例外ではないでしょう。
この結果に友人はとてもショックを受けていました。
病気を持っているとわかった以上、人に渡すわけにはいかないだろう、と。
私は考えました。
確かに私は忙しいし、ゆっくり猫に構ってやる余裕はないけれど、
アガリクスならいくらでも食べさせてあげられる。
白血病のウィルスを消すことはできなくても、それに負けない体力をつけてあげられるかもしれない。
そこで、友人に連絡をして、兄弟一緒に我が家で育てたいと申し出ました。
最初はアガリクスを嫌がった、泳吉と洋介。いつの間にか好きになっていた。
我が家に迎えられたオス猫たちに、泳吉と洋介と名前をつけました。
早速フードにアガリクスを混ぜましたが、最初はなかなか食べようとしませんでした。
食いしん坊ですから、フードを残すことはないのですが、皿についたアガリクスをなめるようなことはありませんでした。
いつも皿に残っているアガリクスは、先住猫のアテネがせっせとなめてきれいにしていました。
先住猫のアテネには予防接種をし、2週間隔離しました。その間ずっとケージの中での生活でした。
アテネは最初のうちこそ頑張って威嚇したり(ハァーっと、優しい空気が出ているだけでしたが)、クンクンにおいを嗅いでまわったり落ち着きませんでしたが、2週間の間にだんだん慣れていったようでした。
初めてケージから出た日。
いつのまにかケージの中と外で仲良しになっていた3匹は、もう無心に遊びまわっていました。
人間の子どもと変わりませんね。
私が仕事から帰った時には、遊びつかれてぐったり猫団子になっていました。可愛かったですね。
揺り動かしても目がさめないくらいぐっすり眠っていました。
そんな風に、3匹仲良く過ごしてあっという間に2年が経ちました。
気が付いたら、泳吉たちはアガリクスが好きになったのか、背に腹は変えられなくなったのか、
つるつるピカピカ、最後までアガリクスをきれいになめるようになっていました。
去勢手術以外では病院にかかることもなく、元気に育ちました。
2年後の血液検査で、白血病は陰転していた。
これだけ元気なのだから、白血病の心配はないのではないかとずっと考えていました。
検査を延ばし延ばしにしていたのは、実は、やっぱり怖かったからなのです。
猫飼いの先輩からは、早く検査をしてはっきりさせた方がいいよ、と何度も言われていました。
「もし泳吉たちが陰転していれば、それが励みになる仔たちがたくさんいるんだよ。」
私が知っている人の中に、この病気と闘う猫を飼っている人がたくさんいました。
もし、泳吉たちが陰転していれば、その人たちが少しでも希望をもてるようになるかもしれない。
私も重い腰を上げて、ようやく検査を受ける決心をしました。
最初に泳吉たちを保護した友人に付き添ってもらい、泳吉たちの母猫がかかっている病院まで遠出しました。
車の中で、ニャオニャオ、大きな声で文句を言うように鳴き続けるのをなだめすかしならやっと病院に到着しました。
この調子では診察の時にはどんなに暴れるかと思っていた泳吉たちは、情けないことに萎縮しすぎてカチコチ。逃げることも鳴くこともできないという、有様でした。
それで随分助かりましたが、意外とあっさりとスムーズに検査は終わりました。
ドキドキしながら検査結果を待っていると、
「陰性でしたよ。」
と医者の大きな声が受付の裏の方から聞こえてきました。最初ははっきり聞き取れず、
「は?」
と聞き返したところ、
「どっちも、白血病は陰性でした。」
と言われました。この瞬間、どんなに嬉しかったことか!どっと力が抜けました。
と同時に、2匹の病気のことをこんなに心配していたんだと、初めて気づきました。
病院を後にしながら、この思い、この思いを、たくさんの人に味わってほしいと思いました。
この病気の全ての猫たちが、こんな風に陰転するものではないでしょう。
この病気は、そうそう簡単に乗り越えられるものではないでしょう。
しかし、何か力になれることがあるのではないか。
微力でもいいから、力になりたいと考えて、厚かましいながら自分の猫の体験をご紹介させていただきました。
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